「断熱材ってどれがいいの?」必須の各種断熱材を解説
  • 断熱性能
  • 公開日:2022.4.16
    更新日:2022.10.28

「断熱材ってどれがいいの?」必須の各種断熱材を解説

目次

断熱材とは?

熱移動や熱伝達を減少させるものを総称して、断熱材といいます。
簡単に言うと、熱を遮断する材料のことです。
この断熱材と呼ばれるものには様々な素材や商品があり、その商品ごとにメリット、
デメリットを持ち合わせています。その様々な断熱材を比較するための客観的な尺度として、熱伝導率という言葉をみなさんも聞かれたことがあるかもしれません。

断熱材のサイトには、熱伝導率とか熱抵抗値とか出てくるけど、どう比較したらいいの?


熱伝導率とは、熱の伝わりやすさを表す値です。
熱は数多くあるエネルギーの一つで、
熱い方から冷たい方へ自発的に伝達されるエネルギーです。

熱伝導率[W/mK]は厚さ1mの板の両端に1℃の温度差がある時、
その板の1㎡を通して、1秒間に流れる熱量を いいます。
つまり、数値が小さい(ゼロに近い)程、熱を伝えにくい物質となります。
断熱材の性能を比較する際に、この数値を目安にされると良いかもしれません。

ただし、気密性などの条件を除くと、この数値はあくまで、断熱材の厚さ1mの板という同条件の元で、性能を比較した数値であって、実際の住み心地には断熱材の厚さが関係してきます。

つまり、熱伝導率の数値が小さくて薄い断熱材を利用するのと、反対に熱伝導率の数値が大きく厚い断熱材を利用する場合とでは、熱伝導率だけで、どちらの住み心地がいいか判断することはできないのです。

実際に断熱性能を比較するには、断熱材の厚さを加味した熱抵抗値(㎡K/W)を比較して、熱抵抗値が大きな方が断熱性能の良い断熱材となります。
熱抵抗値とは断熱材の厚さに応じて、どれだけ熱を通しにくくなるかを表す数値です。
熱伝導率と熱抵抗値の関係はこのような式になります。

ちなみに、上の式の分子、分母を逆にしたこのような考え方があります。

これは、熱貫流率(U値)といって、1㎡あたりの逃げる熱量のことをいいます。
こちらは数値が小さい方が断熱性能が高い部材となります。
さらに、この熱貫流率(U値)を各部材ごとに求め、各部材の面積を掛けたものの合計を
建物の外皮面積で割ったものが、
みなさんもCMなどで聞かれたことがある外皮平均熱貫流率(UA値)といいます。
外皮平均熱貫流率(UA値)も数値が小さい方が高性能住宅となります。

住宅の断熱の施工方法にはどのようなものがあるの?

「充填断熱工法」「外張り工法」「外付加断熱」の3つがあります。

住宅の断熱の施工方法

充填断熱って何?

充填断熱工法は、柱などの構造材の間に断熱材を入れる方法です。 ボード状や繊維状の断熱材を入れたり、粒状の断熱材を入れる工法で、木造住宅において広く採用されている工法です。 壁の内側の空間を利用するため、厚みのある断熱材を入れることができ、比較的低コストで施工できる等のメリットがあります。

外張り断熱って何?

外張り断熱は建物全体を断熱材で覆う工法で、柱・間柱、梁など構造の外側に断熱材を施工する工法です。建物全体を断熱材で覆うため気密性能(C値)が高まりやすく、結露しにくいことがメリットです。一方、比較的施工コストが高いこと、壁に厚みが増すため、施工できる断熱材の厚さが充填断熱に比べ、薄くなりがちなことがデメリットです。

付加断熱って何?

付加断熱は充填断熱と外張り断熱を組み合わせた方法で、メリットとして断熱性能は格段によくなります。デメリットとしては外側と内側の両サイドから断熱処理を行うため、施工費が高くなってしまうことです。

壁まわりを断熱することはわかったけど、屋根や天井、床下は断熱しないの?

屋根断熱・天井断熱

屋根断熱…屋根断熱は屋根の勾配に沿って断熱材を入れています。
天井断熱…天井断熱は天井の仕上げ材のすぐ真上に断熱材が入っています。屋根断熱と天井断熱を併用することは少なく、どちらかが採用されることがほとんどです。

3種類の床下断熱方法

床下の断熱方法は3種類あります。

3種類の床下断熱

床下断熱…床下断熱は、床組みに使われる大引きや根太の間に充填されている断熱材の事を     いいます。シロアリ対策として、基礎と土台の間には通気パッキンと呼ばれる通気層を設け、床下の通気性を上昇させます。

基礎内断熱…基礎内断熱は、床組みではなく基礎に直接断熱材を貼り付けているのが特徴で、床下空間も室内空間のひとつと考え、基礎のコンクリート自体を断熱材で覆う施工法です。
床下ではなく住宅の基礎立ち上がり部分を断熱材で覆います。換気口の設置は不要です。

基礎外断熱…基礎外断熱は基礎の立ち上がりの外側に断熱材を施工する方法です。基礎の断熱性を高めるのに最も効果があると言われていますが、断熱材を外部に曝すことから、シロアリの被害に遭いやすく、選定する断熱材を防蟻処理されたものを使用する必要があります。

断熱材の種類にはどんなものがあるの?

まず、原料の違いで大きく分けると「自然系」「石油系」「鉱物系」の3種類に分類できます。自然系には、「セルロースファイバー」「ウール」、石油系には「ビーズ法ポリスチレンフォーム(EPSとも呼ばれる)」「押し出し法ポリスチレンフォーム」「硬質ウレタンフォーム」、「フェノールフォーム」、鉱物系には「グラスウール」「ロックウール」などがあります。

セルロースファイバーは自然素材と聞いたけど、調湿効果はあるの?

セルロースファイバー断熱材は木質繊維を使用して製造された断熱材で、リサイクル新聞紙で作られています。また、新聞のほとんどに植物性のインクが使用されているので自然素材と言えます。その内部は無数の小さな穴の空いたセルロースファイバーで構成され、この小さな穴により、セルロースファイバーは、周辺の湿度が高くなれば湿気を吸収し、周辺の湿度が下がれば湿気を放出するという吸放性をもっています。もちろん、セルロースファイバーが万能ということではなく、調湿性を考える際には、結露計算という計算によって判断されるべきですし、その他にお家の気密性も重要になってきます。

セルロースファイバーの施工方法ってどんな方法があるの?将来沈下しないの?
下の2つの工法があります。

吹き込み…建物の柱の室内側に透湿防水シートなどをしっかり貼り付け、袋状にして、その内側の空間にセルロースファイバーをブロアーの空気と一緒に吹き込む工法です。また、水や接着剤などは一切使わずに、一定の施工密度をクリアすることで、将来的な沈下を防ぐ工法です。

吹付…セルロース断熱材を霧状の水の中を通過させ、風圧で壁に吹付ける工法で、小さな隙間や手の届かない小さな空間も埋めることができます。吹き込み工法と違い、吹付け面および両側の間柱で固定する工法です。セルロースがしっかりと絡み合い、接着剤が作用して、自重による沈下で、ずり落ちる心配がありません。
言うまでもなく、どちらの工法でも隙間なく充填することが重要です。

セルロースファイバーの耐熱性は?

ガスバーナーで直接加熱しても、ホウ酸の効果で、表面が炭化するのみで自己消化性を持つため、火が燃え広がるのを防ぐ力があります。また、ホウ酸は人体にも使われる安全な薬剤で、土壌にも含まれる天然資源です。そのホウ酸の効果に加えて、セルロースファイバー自体が高密度で酸素が入りにくくなっています。そのため、火が燃え広がる延焼を防ぎ、万が一の火災でも逃げる時間を稼ぐことができます。 さらに、原料が木質系断熱材とホウ酸とエコな物質で構成され、燃えた時も有害ガスがでないため、万が一の避難時も安心です。

セルロースファイバーの防音・遮音効果

セルロースファイバーの防音・遮音効果は?

防音・遮音効果については、セルロースファイバーは高い効果を発揮します。 セルロースファイバーの細かい繊維が空気の集まっている無数の部屋になっており、そのポケットが音を吸音する役割も兼ね備えているためです。反対に密度の低い断熱材(ウレタン断熱材、ポリスチレン断熱材、フェノールフォーム断熱材)は音を遮る効果が少ないです。

ゴキブリやカビに対する効果

セルロースファイバーってゴキブリやカビに対する効果があるって本当?

ホウ酸を添加しているため防虫作用があります。シロアリ、ゴキブリ、ダニ等の害虫を寄せ付けません。また、木材腐朽菌、カビ発生を抑える効果があることがわかっています。
さらに、ホウ酸の安全性は高いと評価され、人間にとっても栄養学的に重要と考えられて います。ホウ酸の急性毒性は、食塩とほぼ同程度だと考えられますので、人体にも安心です。

セルロースファイバーってゴキブリやカビに対する効果があるって本当?

ウールって羊毛ですか?住宅の断熱材として使うの?

原料は羊毛です。住宅にも使用していますが、価格は高価です。羊の毛を刈り取り、各工場で洗浄、加工、裁断されシート状の製品として使用されます。タンパク質であるウールは、土中に埋めると微生物によって分解され、土に還ります。ウールは環境に負荷をかけることのないエコな断熱材です。そして、もともと繊維質であるウールは、気体となっている水蒸気を内部にどんどん浸透させるという性質を持っています。湿度の高い環境下では外部の湿気を吸湿し、乾燥した環境下では内部に蓄えられた水蒸気を放湿して壁内の湿度をコントロールします。もちろん調湿性の前に、結露については結露計算によって判断されるべきで、他にも気密性も重要になってきます。

ビーズ法ポリスチレンフォーム

ビーズ法ポリスチレンフォーム(EPSとも呼ばれる)って何?

一般には、発泡スチロールと呼ばれるものです。軽量で断熱性は高く、湿気に強く、耐水性も高いです。一方、耐熱性は低く、約90℃で溶解しますが、有毒ガスが出ないことが特徴です。ポリスチレンフォームに発泡剤や難燃剤を添加し、工場で金型に充填し加熱成型することで、簡単に加工できるので、ほとんどのEPSは加工後、製品として出荷されます。建築現場では、床下断熱の断熱材などとして、はめ込まれ成形材料として用いられます。

押し出し法ポリスチレンフォームって何?

ポリスチレンと難燃化剤を押出機で溶かして混ぜ合わせ、押出成形したブロックから切り出した板状の製品です。特徴としては断熱性が高く、言い換えますと、熱伝導率が低いです。また水に約20時間浸す実験では、他の石油系断熱材(EPSや硬質ポリウレタン)と比較して水を吸わず、水に浸した後の熱伝導率の維持率も通常の92%と非常に高い数値を示している資料もあります。そのような湿気に強い背景から、外断熱や基礎断熱で良く用いられます。デュポンスタイロ(株)のスタイロフォームや(株)JSPのミラフォーム、(株)カネカのカネライトフォームが有名です。

硬質ポリウレタンフォームって何?

硬質ウレタンフォームとはポリオールと、触媒、発泡剤(水など)、整泡剤などと一緒に混合して、泡化反応と樹脂化反応を同時に行わせて得られる、均一なプラスチック発泡体です。見かけは、小さな硬い泡の集合体で、一つ一つが独立した気泡になっていて、この中に熱を伝えにくいガスが封じ込められています。このために、硬質ウレタンフォームは長期に亘って優れた断熱性能を維持します。アキレス(株)のキューワンボードなどが良く知られています。

発泡ウレタンって何?

発泡ウレタン


建築の世界で使用される発砲ウレタンとは、硬質ポリウレタンフォームに分類されます。
それぞれの構造は、硬質ポリウレタンフォームが独立した気泡で構成されているのに対し、現場発砲ウレタンは連続発砲という部屋がつながった状態で構成されています。
発砲ウレタンは、硬質ポリオール成分とイソシアネート成分の2液が化学反応して形成される樹脂です。この2液を専用の機械で混ぜ、連続発砲した樹脂は吹付時に30倍〜100倍の体積に膨らみます。建築現場では、スプレー式の器具で建物の柱間などに吹き付けることから、吹付断熱とも呼びます。この断熱方法は木材に対しても接着力は高く、施工性が容易なことから、近年、普及しています。

発泡ウレタンは火災に強いの?

建築用断熱材としては準不燃材料、難燃材料の認定を受けた製品などもあります。吹付断熱の難燃性はJIS A 9526などで規定された試験によって評価されますが、これらの試験は一定の条件下での材料の燃焼性の比較を目的としたもので、実際の火災時の危険性を反映したものではありません。試験に合格したもの、あるいは準不燃・難燃材料の認定をうけている材料であっても火気に接すると燃焼しますので、他の一般的なプラスチック材料と同様に火気に対する注意が必要です。

フェノールフォームとは?耐熱性が高いって本当?

フェノールフォーム

フェノール樹脂という原料を加工処理したもので、日常生活でも様々な場面で使用されています。耐熱性が高く、フライパンの取っ手などにも使われていることから、熱伝導率は非常に低く、同じ厚みでもグラスウールをはじめとする他の断熱材の2倍の熱の伝えにくさを持っています。一方、性能が高い分、非常に高価な建材でもあります。有名なのは旭化成建材のネオマフォームやフクビ化学工業(株)のフェノバボードです。

グラスウールとは?

グラスウール


グラスウールはガラスを高温で溶かしミクロン(1,000分の1ミリ)単位の細い繊維にして遠心力等で吹き飛ばし、綿状に細かく繊維化したものです。製造方法は、綿菓子をつくる原理と似ています。グラスウールは、熱を通しにくい空気の特性を活かし、ガラス繊維の間に無数の空気を閉じ込めた部屋を形成し、優れた断熱性能を発揮します。

グラスウールって価格が安いって聞いたけど、性能面は?

コストパフォーマンスに優れていて、不燃材料であり防火性に優れています。また無機質のガラスを主原料とするため、シロアリの食害に強く、加工性にも優れます。ただし、施工上の問題などで、グラスウール自体が水分を含むと、重さからズレ落ちたりする施工事例が、良く知られています。その場合は空気が対流する空間が生じてしまい、断熱性能は悪くなってしまいます。グラスウールそのものは軽く、価格も安く手に入るため、扱いやすい印象がありますが、断熱材にムラや隙間があったりすると、壁内結露が生じやすくなったり、断熱性能にも影響が出ます。これらは施工する側の意識や専門知識、力量に左右されることから、注意が必要です。また、結露を防止するためには、グラスウール断熱材の施工時に、防湿シートと組み合わせて施工することが重要となります。

ロックウールって?

ロックウール


ロックウールの原料は、鉄を生産する際に出てくる「高炉スラグ」や、玄武岩などの「天然岩石」です。それらを1,500〜1,600°Cの高温で溶かしたのち、遠心力で吹き飛ばし、繊維状に加工した人造鉱物繊維です。

ロックウールはグラスウールと比較して価格差はどれくらい変わるの?

価格面では、同じく鉱物を原料とする人工的な繊維系断熱材「グラスウール」と比較すると、コスト高になっています。ロックウールもグラスウール同様に熱や火に強い特徴を持っています。ロックウールは素材としては耐水性があるのですが、水を吸収すると素材の性質が変化し断熱効果が大きく下がってしまいます。空気を分断する細かい空間で断熱性能を高めていますが、水分を吸収することでそうした空間が塞がれてしまうのが原因です。グラスウールと同様、高い技術力を持つ業者に施工を依頼することが重要です。

断熱材のリフォーム工事は可能?

断熱材のリフォーム工事


もちろん可能です。一般的には窓、壁の優先順位でリフォーム工事をすると、コストパフォーマンスが良くなると言われています。また、今後も値上がりすると言われている光熱費対策として、断熱改修工事を考える方が増えてきています。

一般に販売されている断熱材を使ってDIYってできる?

工法によっては専用の機械や資格が必要ですので、必然的に工法は限られてきます。また、どの断熱施工についても専門知識が必要であったり、現場の状況に応じて、対応していく必要があります。DIYの程度にもよりますが、全く経験のない方には、簡単な作業とはいえません。

断熱材選びで、後悔しないためには

最後に、この断熱材を使っているから結露しないなどということではなく、どの断熱材を施工したとしても断熱欠損などがないように、きちんと施工する必要があります。もちろん気密性も重要です。もし断熱性が高くても気密性が低いと、高温多湿な日本の環境下では、結露の発生により、腐朽菌などが繁殖し、住宅に深刻な影響を与える可能性もあります。住宅を建てる際には、様々な角度から考える必要があります。もちろん素材、工法などによる特色はありますので、断熱材選びのヒントになれば幸いです。

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